お先、どうぞ
2021
いつも未来のことが気になって、私たちには期待する、という悪い癖ができる。いつも何かが近づくのだ。毎日々々「またね」と繰り返しながら。岸壁から見ていると、小さい、くっきりとした期待という名の輝く船団が近づいてくる。あんなにゆっくり、うんと時間をかけて。急ごうなんてしやしない。でも私たちは、結局、手に失望を束のように握りしめたままだ。なぜなら、巨大船団は邪魔もされないのに、真鍮細工もあざやかに、ロープもしっかり結ばれ、旗をなびかせ、船首は金の乳房を光らせ、こちらに身を乗り出しているというのに、決して停泊しないから。あ、来たと思うそばから、もう過去のものになっている。最後まで。私たちは信じ続ける。きっと船はそれぞれ停まって、私たちに幸という積み荷をおろしてくれると、こんなにずっと熱心に待っていたのだから、きっと報われるはずと。だけれど私たちは間違ってる。私たちにやってくる船はただひとつ。黒い、見慣れぬ帆をなびかせ、ひきつれているのは、鳥もいない巨大な静寂。船のすぎたあと、水は満ちも、波たちも、しない。
A cup of coffee, a pinch of chance, a liter of penance, a blue-skinned man with a mustache standing alone in the middle of the night. Soon, IKEA swallowed me without a trace. Into a black hole. And then...
無数の若者が死んだ。才能ある若者も死んだ。歯抜けの老いぼれのために。つぎはぎだらけの文明のために。口元には魅力的な笑みをたたえ すばしこい瞳が泥をかぶって閉ざされた。百数十体の壊れた塑像と数千冊の古本が残された。