野火
私は葬式を感じた 頭の中で。会葬の人たちが行ったり来たり 歩いている 歩いている そうしてついに。感覚が裂けていくようだ。会葬者がみな座ると 拝礼が始まった 太鼓のように。叩く音 叩く音 そしてついに 自分の精神が麻痺していくかと私は思った。それからみな棺を持ち上げ 私の魂を横切ってきしみをたてる音 またしてもあの鉛のブーツ それから 空間が 鳴り響き出した。まるで天空のすべてが鐘になったよう 存在は 耳となり 私も 静けさも 周囲からは切り離された種族 衰弱し 孤絶し ここで。それから理性の底板がぬけて 落ちていく どんどん そうして世界にぶつかる 落ちるごとに もうわからない そして。